サツマイモを育てる、と決めてから最初にぶつかったのは、栽培方法そのものより先に、もっと単純な問題だった。

自分は、この畑にどれくらいの頻度で通えるのか。

住んでいる場所から実家までは、決して近い距離ではない。現実的に見積もって、通えるのはせいぜい2ヶ月に1回程度。草刈りのためだけに通っていたこれまでと、大きくは変わらない頻度だった。

「2ヶ月に1回」という制約から逆算する

AIに相談しながら整理していくと、この頻度は栽培する作物選びにも影響することが分かってきた。幸い、サツマイモは乾燥に強く、頻繁な水やりや肥料の管理を必要としない作物だという。むしろ手をかけすぎるとよくない、というくらいだ。「2ヶ月に1回」という自分の制約と、思いのほか相性がよかった。

ただし、作物が手間いらずだとしても、「異常が起きていないか」を確認する手段がないという問題は残る。台風の後に畑がどうなっているか。水はけは大丈夫か。病害虫の兆候はないか。次に訪問するまでの2ヶ月間、何も分からないまま過ごすことになる。

これは畑に限った話ではなかった。以前、コロナ禍で実家に行けない期間が続いた後、久しぶりに訪れてみると、水道が水漏れを起こしていて、家の中に泊まれなくなっていたことがあった。電気は通っているのに、水回りが使えないというだけで、寝泊まりする場所として成立しなくなる。その時は仕方なく、近くのホテルを取って、日程によっては2〜3泊、そこから通う形で作業をすることになった。

家の中で何が起きているかを、行くまで知る手段がない。この不便さを、畑だけでなく空き家そのものに対しても感じていたことが、後々の設計にも影響してくる。

そこで浮かんだのが、遠くからでも様子がわかる仕組みを作れないか、という発想だった。

空き家という前提が、設計方針を決めた

ここで、もう一つの事情が絡んでくる。この土地は、電気の通っている「空き家」の敷地内にある。

当初は、家庭のコンセントから電源を取ることも考えた。しかし、長期間人が住んでいない家の中の電気配線に、一年中電気を流し続けることには、正直不安があった。古い配線がどこかで傷んでいて、そこから漏電や火事が起きるようなことを、わざわざ自分から作り出すことになりかねない。

そこでAIに相談する中で決めたのが、「家の電気にはいっさい頼らない」という方針だった。太陽の光で発電するパネルと、電池だけで動く、家とは完全に切り離された仕組みにする。これなら、空き家そのものが抱えるリスクと、新しく作る仕組みのリスクを、はじめから別々にしておける。

インターネットも、家に頼らない

電気を家に頼らないなら、インターネットへのつなぎ方も同じ考え方にする必要があった。

最初は、実家に新しくインターネットの回線を引くことも考えた。しかし、それも結局「家の設備」を新たに増やし、契約や管理の手間を空き家に持ち込むことになってしまう。

最終的に選んだのは、スマートフォンと同じように、SIMカードを使ってそのまま携帯電話の電波でインターネットにつなぐ方法だった。畑に置く機械が、家の設備をいっさい経由せずに、自分でインターネットへデータを送る。電気もインターネットも、家から完全に切り離す。この方針が固まったことで、ようやく具体的な部品選びに進めるようになった。

「見守り」という言葉がしっくりきた

振り返ってみると、最初にイメージしていたのは、畑に置いた機械に土の湿り気や気温を測ってもらって、その数字をスマホで確認する、というだけの技術的な話だったはずなのに、いつの間にか「この土地を、留守の間も見守ってもらう」という感覚に近づいていた。

畑の状態も、空き家そのものの状態も、自分がそこにいない間、何かがずっと見ていてくれる。そのための土台となる設計方針が、ようやく固まった。

次回は、この土台の上に「カメラ」を組み込んでいく過程――そしてその過程で、当初は考えていなかった使い道に気づいた話を書きたい。